人生は命ある限り、年齢を重ねるほどに、ドラマチックだ。譬え、身体が思うようにならないとしても、頭脳や感情や、そして感謝を感じる心がある限り、それは同じと考える。
さて、今の私は最近、「マジ.ロコ」というもので実用新案を取得し、その製作に夢中になっている。これは、数学的に魔方陣の原理を応用し、それを具体化し て、手に取り、遊べるようにしたものだ。魔方陣そのものは、大昔からの人類の智慧である。その定義は、ご存知の方は多いと思うが、「正方形の方陣に数字を配置し、縦・横・斜めのいずれの列も、その列の数字の合計が同じになる組み方」のこと。
そこに独自の簡単な数式を用いて、工夫をした木で造れば積木であり、何からでも造れる。大人にとってはパズルとなり、子供たちにとっては一種の知育玩具でもあり、中高年は、手先と頭脳を楽しませることが出来る。ちょっと不思議で、魔法のようなのだ。「マジ.ロコ」のマジとはマジックつまり魔法であり、ロコは 特別の意味はなく、サイコロのコロを転がすとロコとなる。ロコという音は力強く、頼もしい響きがあるので、「マジ.ロコ」と命名した。
魔方陣で一番よく知られているのは、三の魔方陣で、三×三=九 で、一~九までの数を方陣に正方形に組み、縦.横.斜め足して全て一五になる。これは五千年も昔からの東洋哲学の基本数字で、各数とその置かれた位置に意 義を見出し、易学、占い、色彩、方角の認識、陰陽道、儒教、七五三の祝い、鬼門の考え方、また、生年月日の占いなどの大元となっている。一は北で鼠、白、 一白水星。二は西南で、黒、未申、二黒土星。三は卯、東で三碧木星。四は辰巳、南東、四緑木星、九紫火星などはみな三の魔方陣の組み合わせを元にしている 考え方である。
三の魔方陣は対象形を除いて.一種類しかない。しかし、四の魔方陣は八八〇種類の魔方陣が造れる。五の魔方陣はなんと二億以上の組み合わせが可能である。このように、各数字には独自の魔方陣が存在する。
一番、身近で、広がりを楽しめるのは、四×四=十六。十六個の数字で八百八十通りの組み合わせが可能な「四の魔方陣」であろう。
この八百八十通りの組み合わせは既に全て明らかになっているので、出来ている表通りに並べるだけでも面白く、手先や頭の体操になる。また、その組み合わせをどう造るかを考えるのはかなり高度な知的遊びになる。
トコトン付き合いたければ、八八〇種類の魔方陣を自分であらためて考え出すのも良い。それをノートに書き込んだりして、「マジ.ロコ一六」をネタに談笑する 「マジロコ同好会」をつくりたいと願っている。あくまで、あまり負担や義務はなく、マジロコの面白さをサカナにすることが唯一最大の目的。意外に、職種や 年齢を超えた面白く気軽で自由な集まりにならないか?と期待する。会の運営管理は大変なので、どなたか、そういうことが好きな方が手を挙げてくださればと 願っている。
マジ.ロコには実はいろいろパターンがあり、遊び方や対象年齢が微妙に異なる。それぞれ試作段階を経て、商品化のメドがたったところだ。
現在の共通点は、桧の上質材に、匠の技で全角をカットし、焼き印で仕上げた。箱を開けた時、「良い香り!」と皆、喜ぶ。
どうしても持ち出しは相当だが、外国旅行に数回行ったと思って、楽しんでいる。さりとて、製作したものを多くの方に知っていただかないと、せっかくの製品が 世に出ていかない。この製品が普及することで、日本の林業が盛んになってほしい。また、バーチャルばかりが先行し、ややもすれば不安定になりがちな心の子 供も大人も、数の世界やそれに象徴される現象を抽象的にではなく、直接の体験と出来ることは素晴らしいと思っている。また、数は、世界共通のものであり、 大望を抱くとするならば、世界の「マジ.ロコ」となる可能性もある。
「一六個一段セット.桐箱入り」は大人向きパズルで、これは、魔方陣通りに組まないと、箱に収められない。そこがミソ。
魔方陣など面倒だという方、また、中高年や、忙しいお母様方には、「マジ.ロコ一六の二段詰め」。これは加算を応用するだけで、収納が簡単に楽しくでき る。また、お子様への贈物には「マジロコ一六、四段」が良い。お城や塔など好きなものが製作でき、子供の創造性を高め、遊びながら自然に数の世界に興味を 持つ。
製作はしたが、価格の決め方ほど難しいものはない。売る度にマイナスでは先が続かないし、あまり高くしたくはない。いろいろ考え、アドバイスも受け、マジ. ロコ十六の一段詰めのモニター価格を決めた。モニター価格とは将来の定価の半額程度だが、実際に使ってみての感想などを定期的に伝えて貰うための販売であ る。その意味で、「アンケートに答えるだけで無料」のサービスがよく世間にあるのは、この為であろう。創り手としては、実際に手にした方の意見を永続的に 聞いて、より良い商品に仕上げていくことを常に考え続けている。
実は今、永年かけた作品の脱稿で物書きとしても忙しく、時間的余裕はないのだが、マジロコ創作過程は刺激的で面白い。実用新案の取り方、自分が創った試作品を商品となるよう、職人さんたちとの交渉。そして、いつの間にか、マジ.ロコの面白さ、不思議さに惹かれて、皆が懸命に協力してくれるようになる喜びなど、今までの人生で経験したことのない体験であり、初春スタートの話題とした。